♪Meg♪の色々なんか・・・w

はい。♪Meg♪が色々なんか書いていきます。毎日は交信しないのでご了承ください。

艶葉樹比丘尼(椿比丘尼) 上



これは昔々ある少女が人魚の肉を食べ、
不老不死を得たというお話が、
まだ世に知られる前のお話…


江戸よりはるか北の地に
とてもおいしく、かつ体にも良い茶を煎れる茶屋がありました。店主は十五そこらの娘だったそうな。
その娘にはほとんど寝たきりの祖母がおり、
心優しい娘は祖母のため時間ができてはお寺参りへいきました。
ことの始まりは、とある日のお寺参りでのこと。
娘のいくお寺は草木を傷つけてはならないと
伸ばしっぱなしで、もさもさと茂っていました。
しかし、その日はその草むらに踏みしめた跡があり道ができていたのです。
娘は気になってしまい、その道を進んでいきました。
草むらが開けた時、そこには洞穴がありました。
娘は洞穴に驚きはしましたが、それより洞穴で咲く椿に目を奪われてしまいました。
娘は十五とはいえ、立派な茶屋の店主です。
そんな娘の趣味の一つとして美しい葉や花を見つけると
煎じて飲むことがありました。
もちろん娘はその椿を持ち帰り、煎じて飲むことにしました。
口にしてみると、あまりのおいしさに日常的に飲むようになり、
祖母にも少なめですが分けるようになりました。

「これは何のお茶だい?」
「美しい椿のお茶よ」

それから二十年と少しばかりたちました。
娘は十五の姿より変わらず、祖母もほとんど寝たきりのまま、
変わらず生きていました。
二人は時が止まったように、約二十年間そのままの姿で生きていたのです。
娘が若々しくいることも奇妙なのですが、祖母がここまで長生きするとは
到底考えられなかったことでした。
自分の体のことは自分が一番わかるといいます。
祖母はさすがに不思議に思い、娘に
「このお茶の椿は
いったいどこの椿なんだい?」と聞きました。
娘は「お寺の椿よ」と答えました。
祖母が「そこへ連れていってくれ」と言うと
娘は「無理はしないようにゆっくりいきましょう」と答え
祖母を洞穴の前まで連れていきました。

ついてみると祖母は全てを悟り、
目を閉じてつぶやきました。
八百比丘尼さまですね…」
すると祖母は何かに導かれるように洞穴へ消えようとしているではありませんか。
娘は止めようとしますが、一向に歩みを止めてはくれません。
祖母は「まだ来てはいけないよ」と言います。
娘が「どうして?」と聞くと
祖母は「私は十分生きました。あなたはまだもう少し生きていなさいな。」と言いました。
聞き分けの良い娘でしたので、娘は祖母を見送りました。
娘は、祖母は死ぬ気なのだろうと
わかったので静かに泣きました。
この時の娘には十分に生きると
いうことがまだ分かりませんでした。